毎年ミステリオのクリスマスパーテイーで語ってくださる、語り部の川島昭恵さんから9月&10月のお知らせです。昭恵さんは子どもの頃おたくふく風邪から視力を失われました、彼女はいつでも全部見えるかのようなきれいな瞳と美しい心の持ち主で、お会いするたびに心が安らかになります。そんな昭恵さんから心温まる猫のお話しも今回は伺ったので、みなさんに是非紹介したいと思います。(上写真はこの夏彼女の語り部を聞きにいったときのもの)
この秋の予定:9月14日(日)3時から。作品は、安房直子作「きつねの窓」「誰も知らない時間」
10月18日(土)3時から。作品は、安房直子作「星のおはじき」あまんきみこ作「さよならのうた」安房直子作「小さいやさしい右手」。
チャージは、大人2100円、子供1050円。場所:音や金時にて。(西荻窪駅北口より徒歩3分、杉並リハビリテーション病院の前の地下のライブハウス)☎03-5382-2020。昼間開演の30分前、夜の部1時間前に開場となります。ネパール料理がとっても美味しいです。
ここからは、あきえさんが教えてくれたお話し:
私は一軒屋に住んでいます。屋根の一部がトタンなのか、雨音がよく聞こえます。これには良いことと困ることがあります。良い点は、洗濯物を外に干している時など、直ぐに雨音で気がついて、とっとと取り込めることです。困ることは、激しい雨だと雨音も激しくてテレビも聞こえなくなってしまうことです。折角楽しみにしていたテレビの時にこれになると、もうがっかりです。
子供の頃、屋根に聞く音について懐かしい思い出があります。私は中三で引っ越す前は、二階建てですが、やっぱり一軒屋に住んでいました。二階より一階のが大きくて、そのはみ出した部分はトタン屋根でした。かなり大きな面積だったので、大雨だと本当に激しくて怖いような時もありました。その頃、家には猫をよく飼っていたのですが、家の猫さんはいつでも出入りが自由でした。トイレは勝手に外に行ってくれるし、お散歩も自由です。お腹が空いた時はもちろん、寒い時や、暑さをしのぎたい時、その他気が向いたらいつでも勝手に入ってきます。
ただ困るのは、雨の時でした。足が泥で汚れているので、それが困るのです。それで母がすごいことを思いつきました。家の直ぐ傍に松の木があったのですが、それに登ると、猫さんなら二階の屋根にひょいと飛び移れます。松の木を登って屋根を歩いて2階の窓に来るまでに足の泥は丁度良く落ちるし、屋根を歩く音で猫さんが帰って来たのが直ぐ分かります。でも、こんなこと、口で説明したら簡単ですが、猫さんに伝えるのは難しいですよね。それにも関わらず、家の猫さんたちが賢かったのか、それとも母の教育が良かったのか、猫さんたちは雨の日はいつもそうやって帰って来たのですから、大したものですよね。
えっ?言葉の通じない猫さんにどうやったのかって?うーん、多分、言葉は違っても、真剣に伝えようと思えば、ちゃんと伝わるものなのでしょうね。母は大雨の時、猫さんが庭から雨戸の外で「にゃーにゃー」と鳴いても、
「駄目よ!お二階からいらっしゃい!」と毅然と人間の言葉で猫さんに答え続けました。「ねぇ、開けてって言ってるよ」と私が言っても、「駄目駄目、今開けちゃ」と言って断固としていました。諦めて行ってしまったかと、しばし可愛そうなことをしてしまったと私が思っていると、屋根に待望の足音が!母は待ってましたと二階に駆け上がり「いい子いい子」と言いながら猫さんを迎え入れるのでした。
こんなことを繰り返しているうちに、猫さんは雨の時の家の入り方を覚えてしまったのですね。猫さんも偉いし、母も偉いです。大切なのは相手にしっかり伝えようという真剣な気持なのでしょう。信頼関係ががっちりしていれば、勇気を持って伝えられるし、最初は戸惑っても、通じれば、それなりに受け入れられるのでしょう。そして、信頼関係は更に更に深まっていくのでしょう。人間と猫の間でもそうなのだから、人間と人間の間でも、きっとそうですよね。
今は屋根に雨音は聞こえますが、猫さんの足音は聞こえません。でも、雨音を聞くと、ふと思い出すのがトタン屋根を歩く猫さんの足音なのです。あーあ、また聞きたいなぁ。